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ぶつぶつ呟いたり妄想を晒したり小説を載っけたりしてます。
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リボーン(パラレル)書きながら、でもちょっと違うのを書きたくて気晴らしに。
勢いで何も考えずに書いたので第一弾よりもグダグダに長いかと。
(第一弾は告白しようか、という気持ちだった)(←何)

またしても名無しです。
今度は第一弾と先輩と後輩の性別が逆転。けど第一弾は関係ない。(え



『とある女子生徒とその先輩の話』
 

「あ、先輩だ」
 日も暮れかかり、部活も終わりを迎えた。低学年の一年生は後片付けに居残りされるが、まあ特にそのことを不満に思うつもりもなく私は小さなボールが無数に入った籠を両手に持ち上げた。あとはこれを倉庫に持っていくだけとなっている。
 そんな折りに校舎を見上げて、三階の窓から校庭を見下ろしている人影を見つけた。三階の東側。入学したての私の記憶はその場所を音楽室だと記憶している。
 何であんな所にいるのだろう。謎だ。
 まあハッキリと見えるわけではないので、先輩ではないかもしれない。なんというか彼のオーラみたいなものをその人影から感じ取っただけである。見間違いというか、人違い?な可能性は大だ。
 その先輩(仮)はまるで私の声が聞こえたかのように、私が呟いた途端に窓側から離れ見えなくなってしまった。
「先輩? もしかして部活の先輩?」
 あーあ、と思う中で、同じように後片付けをしていた友達がほんの少し焦ったように聞いてくる。ちなみに彼女の手に握られている籠の中にはボールではなくラケットが積まれていた。
「ううん。違うよ」
「なんだ、なら良かった」
 何が良かったのだろうか。私はほんの少し頭を巡らせてから、にやりと笑う。
「ほほう、何か先輩方に見つかるとやばいことでもやったのかね? 川瀬さん」
「ちがうちがう。なんとなく、気分よ。気分」
「ほほう、気分ねぇえ? ……ホントに? ほらほら、この私にその胸の内をどんと打ち明けてみなさい。今なら一緒に謝ってあげるから」
 なんて調子良く言った私はすぐにその言葉を後悔することとなった。何故かは、そう言った直後の川瀬さんの顔から笑顔が消えてジッと私を見つめてきたから。あげくには。
「…本当?」
 なんて言ってきた。
 思わず、私はごくりと唾を飲み込む。
「え……ホントに、何かしたの?」
 聞いても川瀬さんは私の顔をジッと見つめてくるだけで、そうともそうじゃないとも言わない。
 どうしよう。そんな悲壮感漂う顔で私は何を聞くことになってしまうのだろうか。
ちょっとした悪戯くらいならば、ぱっと先輩の元に行ってぱっと謝ってきてしまえばいい。だけどもし漫画や小説のような重大なことであったら、私は友達としてどうすれば……あああ。馬鹿、私の馬鹿!数秒前の自分を張り倒して踏みつぶして殴り倒してやりたい。なんて面倒なことを持ち込みやがっ……いやいや違う、友達の気持ちも察することもできずに軽々しくからかって!
「――ぶっ」
 ぶっ?
「ハハ、や、やばいツボにぶはっ! ハハ、あひゃひゃひゃっ、ひーっ腹が…げほっげほっ」
 あれ何かな、何かなこの展開。
 まあつまり、アレだ。私が今ここで腹を抱えて笑い死にしそうな人を蹴っても何も悪くないはずだ。だって本当に死にそうだし。助けてって言ってるし。むしろ救済活動?
 というわけで、思い立ったら即行動。私は人を助けるために思い切り、その人の尻を蹴りつけた。
「!――ぎゃふっ」
 無防備だった川瀬さんはお気の毒に、そのまま倒れ込んだ。反射的に身体を庇おうとして腕を地面に伸ばすが、彼女の右手にはラケットの入った黄色い籠がある。その籠が邪魔で、川瀬さんの手は地面に変な付き方をした。
「あ、ごめん」
 一応謝っておく。彼女はがばっと起き出した。
「あんたねえ、いきなり何するのよ! 手、捻っちゃったじゃない」
「ごめんごめん。だって助けてって言うからさー」
「どんな助け方!? だいたい、あれは別にそういう意味じゃないでしょ! なんか言いたくなるものなの。べつに本当に笑い死ぬわけないから!」
「やっだなー、そのくらいわかってるって。助けるっていうのはただの口実」
 それから二人して笑いあった。うふふあはは、ふはははっと。
 こうして私たちの友情は深まったのか、溝が生まれたのかは定かではないが。私は友情が深まったということにしておく。これも学生の良き思い出となるだろう(はたして本当にそうであろうか)
「そういえばあんた、いつも先輩先輩って言ってるけど…私その人見たことないのよね」
 川瀬さんが倉庫にラケットの籠を置きながら、私に何か思いついたように話しかけてきた。倉庫の入り口は狭い。私は外で川瀬さんにボールの入った籠の片方を差し出しながら、そんなに言ってるかなと考えた。
 まず私と先輩の繋がりなど全くありはしないから、私が先輩の姿を見かけない日だって多いと思うのだが。
「男? 女?」
「男だよ」
「名前は何ていうの? 格好いい?」
 はて、と首を傾げる。
 容姿は千差万別。けれど一目で格好いいと見えるほどではないが、まあ一目でうわっと思うほど醜いわけでもない。先輩の容姿の美醜はともかくとして、問題は名前だ。
「名前……、忘れた」
 聞いた覚えがある、確か最初会った時に。けど、覚えてないということはそういうことだ。
 川瀬さんが呆れたように見てくる。けれど、仕方ない。私は顔と名前を一致させるのがすごく苦手なのだ。川瀬さんだって最近覚えたばかりだし。だから今までは「ねえ」とか「ちょっと」とか呼びかけていた。
 
 
「と、いうわけで先輩、もう一度名前を拝聴させていただいて宜しいでしょうか」
 大変失礼なことを言っている自覚はあるので、ぺこりと頭を下げた。けれど返ってきた言葉はそれとは全く関係のないもの。
「今、授業中のはずだけど…?」
「抜け出してきました。嘘を吐いてドキドキですよ、私は。第一先輩も人のこと言えないじゃないですか」
 今、授業中ですよと同じ言葉を返せば先輩はそっぽを向いてため息を吐いた。
「授業を抜け出してきてまで聞くことかな、それは」
「だって今度いつ会えるかわかりませんし」
 反対側の校舎の廊下を歩く先輩を見てそう思ったら、先生に挙手をしていた。そして後はお腹が痛いんで保健室行ってきてイイですかと聞いて、教室を出てくるだけであった。
「休み時間にでも三年の教室を覗きにくれば会えるんじゃない?」
 先輩はといえば、そんなことを言う。階で学年が区切られているこの学校では、上級生の階を歩くことがどれほど勇気を入るものか、この先輩に教えるべきだろうか。階段の中央を境に、例え同じ学校の中とはいえあそこは異世界と化すことに。
 いやそもそも何故に自分のことなのに疑問系なのだ。というか、ココで私はもう1つの疑問をさらに問いかける勇気を自分の中で奮い立たせる。
「…先輩って、本当に三年生の教室にいるんですか?」
「うん、居ると思うよ?」
「だから何で疑問系って、そうじゃなくてですね! ああもう、ハッキリ言っちゃいますけど。……先輩、何か心残りでもあるんですか?」
 ああっ、言ってしまった。私は震える拳を膝の上に握って、先輩の言葉を待つ。
 先輩は、数秒の時間を要して
「は?」
 と、一言だけ呟いた。
「あのですね、私なんかが言うのも何ですが…早く成仏されたほうがご家族の方も安心されますよきっと」
「…………………」
 私はたたみ掛けるようにして先輩に訴えるが、その先輩の反応はひたすら鈍い。そこで私は漫画や小説、あるいはテレビのドラマなどの展開をもう一度いろいろと考えた。そして思い当たる展開が一つ。
「? あっ、もしかしてやっぱりあれ。自分が死んでるって気付いてなかったタイプですか先輩は。あ、じゃあこれで真実にも気付けて成仏できますかね?」
「………何で僕が死んでるだなんて思ったの、君は」
 先輩は心底驚いたように私を見てくる。私は先輩に事実を突きつけるのは少々気が咎めたが、ここは心を鬼にして話した。
 私が先輩をぞくにいう幽霊だというものだと思ったのは、昨夜寝る前のこと。思えば私が先輩を見つける時、彼はいつも一人でいたのだ。私以外と話しているのを見たことがないのに気付いた。周りの生徒はまるで先輩を無視するように、各自固まって会話に盛り上がっているのを思い出す。
「それに昨日、私の友達も先輩を見たことないって言ってましたし。もうこれはアレじゃないかと思いまして」
 アレとはもちろん幽霊のことである。
 一通り話し終え、先輩はふうんと小さく相槌を打ったあと黙り込んでしまった。やっぱり余計なお世話だったかなと、私は思い直す。べつに先輩は悪いことをしてたわけでもないし、放っておいても良かったのかもしれない。
 そう思い始めた私の前で、黙り込んでしまっていた先輩が顔を上げた。
「……君、霊感とかあるの?」
「ないですけど。ほら、よくあるじゃないですか波長が合えばなんとかとか…」
 頼りない記憶を探ってそんなことを言えば、先輩からも同意を得た。
「そうだね。よく聞くよね、そういうの」
 ですよね。
「それで、何で死んだはずの人間の名前を今更知りたがるの? 君は」
 先輩は何がそんなに面白いのか、くつりと笑ってそんなことを聞いてきた。
 そんな質問は考えるまでもない。
「気になったからです」
「死人の名前だから?」
「それは多分、関係ないです。とにかく、先輩が気になったので名前を知りたいと思ったんです」
 そう、ふと先輩のことが頭に浮かんで気になったのだ。幽霊だとか、そういう好奇心からくるものではない。ただ単に先輩自身のことが知りたいと思ったからで、揶揄する気持ちはない。
 けれどそれが先輩に伝わるだろうか、と私は不安に思った。先輩に幽霊であると言ったのは私自身であるから、そんな私の気持ちを認めてもらうのは難しいかもしれない。
「あ、それで何て名前なんですか?」
 聞くと、先輩がニッコリと笑う。
「教えない」
 半ば予想していた答えだったとしても、がっくりときた。だけど気を取り直して、精一杯に明るく笑顔を貼り付けて先輩に聞く。
「じゃあ、成仏はできそうですか?」
「うん? …ああ、そうだね。まだ実感湧かないから、もう少し掛かるんじゃないかな」
 そっか。まあ確かにいきなり貴方は死んでますよ、なんて言われて実感など湧くはずもないかもしれない。むしろ先輩にとって私は変態じゃないか。
 とそこへ、授業の終わりを報せる予鈴が鳴った。私は慌てて立ち上がる。
「あ、じゃあ私、行きますね」
「うん、じゃあね」
 軽く手を振られる。私は先輩に背を向けていこうとしたところ、後ろから呼び止められた。もちろん、先輩に。
 何だろう。今までそういうことは無かった。
「あのさ、言おうかどうか迷ったんだけど…」
 と、これまた歯切れが悪い。ますます持って気になる。
 私がじっと先輩を見つめると、先輩は意を決したように――けれどその割に表情は淡々と、言った。
「僕、君に名前を名乗った覚えって無いんだよね。だから覚えてなくても気に悩まなくていいと思うよ」
 ……うん、まあよくあるよね。
 何度か顔を会わせてると、名前を聞いた気になるんだよね。とくに入学式を迎えて、新しい学校で自己紹介ばっかり聞いたりしたりしてるとさ。

+++
たぶん先輩は死んでないですよ。ただの女子生徒の思いこみ。そしてそれを敢えて訂正しない先輩でした。
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