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「あのさ、リボーン。俺、ずっと気になってたことがあるんだけど」
ベッドの上に寝転びながら、既に一度目を通した雑誌を何となしに捲っていた綱吉は、自らの家庭教師に向かってそう切り出した。
その家庭教師といえば、人の部屋で勝手に銃の手入れを黙々とこなしている。やめて欲しいなぁと思いつつも既にその事は諦めていたので何も言わない。
「なんだ」
短い家庭教師の切り返しに、綱吉はほんの少し躊躇した。けれど別にそんな大した質問でもないだろうと判断して、今まで何気なく気になっていたことを尋ねる。
「うん、あのさ。…ボンゴレファミリーって誰が付けたの?」
しかし口に突いて出た言葉は、尋ねようとした質問よりも若干遠回りだ。
間髪入らずに返ってくる答えも予想済みである。
「ボンゴレ初代だぞ」
「うー…ん、ま、そうなんだろうけどさ……」
綱吉は開いていた雑誌を閉じて、そのまま枕に突っ伏した。そこでようやっとリボーンの視線が綱吉に向けられる。
「何だ、何か気になるのか」
気になるのか、と聞かれればそれはもう、もの凄く気になっている。けれどそれは別にマフィアの世界に興味を持ったとかそういった類のものではなく、本当に些細なものだ。多分、知らなくていいことだと思う。むしろ知らない方がいいと、綱吉の何かが訴えている。だけど一度気になってしまったら気になりすぎて、仕方ないのだ。
綱吉は数秒の間、枕に顔を埋めながら言葉にならない呻き声を発し続けた。そうして時間だけが流れる中で、チャキ、と何か物騒な音と共に冷たくて固い何かが綱吉の頭部に押しつけられる。
綱吉の呻き声はピタリと止んだ。
「さっさと言わねぇか」
「い、言うからソレどけて下さいお願いします!」
「10秒以内に言え」
なんて、こんな横暴にもすっかり慣れたとはいえ、この家庭教師は本当に撃つので安心もできない。
半ば自棄になって綱吉は叫んだ。
「だっ、だからぁ! 何で”ボンゴレ”なんて名前を付けたのかなぁって思ったんだよ! ボンゴレってパスタじゃん。アサリの!」
言い終わると静かに頭を押していた冷たい感触が退いていき、綱吉はとりあえずホッと安堵の息を吐く。
それから押しつけられた違和感を拭うように頭部をさすりながら、綱吉は身体を起こして背後の赤ん坊を振り返った。リボーンは予想を裏切らずその小さな手に拳銃を握っていて、綱吉を辟易させた。
リボーンは拳銃を手に持ったまま、相変わらず何を考えているのかよく分からない目を綱吉に向ける。
「知りたいか?」
「……し、知りたいから聞いたんだけど」
おずおずと綱吉が答えるとリボーンの目が憂い気になった、ような気がした。
「そうか。…じゃあ仕方ねぇな」
そう呟くなりリボーンはベッドから飛び降りて、また銃の手入れに戻る。
綱吉は意味深な台詞を残したリボーンの背に向かって、おいリボーンと小さく呼びかけた。すると銃を膝の上に乗せたリボーンが視線だけを動かして綱吉を一瞥してくる。
「まず始めに言っておくぞ、ツナ。お前はこの話を聞いたら後悔する」
「う、うん…まあそれは…」
ボンゴレという言葉の意味がアサリのパスタという時点で既に後悔してるし、「あ、これ聞いたら後悔するな」ということは改めてリボーンに言われずとも勿論わかっている。
曖昧に相槌を示した綱吉に、リボーンがその口を重々しく開いた。
「ボンゴレファミリーが何故ボンゴレなのかと言うと……」
「創始者である初代の好物がボンゴレだったからだ」
……ありえねぇぇ!!
「自分の子供に昔好きだった女の名前を付けるようなもんだろ」
「それはそれでイタいけど何か違うだろソレ!!」
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